この記事でわかること
- AI生成画像の著作権が認められる条件と、日米での判断の違い
- 肖像権・パブリシティ権侵害のリスクと、実在人物に似せないための対策
- 制作会社との契約で確認すべき5つのポイントと、企業が取るべきリスク回避策
「AIインフルエンサーを導入したいけど、法的に大丈夫なの?」
「AIで作った画像の権利って、誰のものになるの?」
「実在の誰かに似てしまったら、訴えられるリスクはない?」
AIインフルエンサーの導入を検討する企業担当者から、こうした法的な疑問を受けることは珍しくありません。コスト削減やブランドセーフティのメリットに惹かれても、「権利関係でトラブルになったらどうしよう」という不安が判断を鈍らせるケースは多いのです。
本記事は、AIインフルエンサー領域の国内外事例を専門に調査・発信するThe AI Influencer編集部が、最新の法的動向と実務的な対策を整理しました。日本と海外の法的判断の違いから、制作会社との契約で確認すべきポイント、企業が取るべきリスク回避策まで、担当者が知るべきことをすべて解説します。
まず理解すべき「AI生成画像の権利」の基本構造
AIインフルエンサーにかかわる3つの権利
AIインフルエンサーの活用に関して、企業が押さえるべき権利は大きく3つに分類できます。
1. 著作権(キャラクター画像や動画の権利)
AIが生成したビジュアルコンテンツが著作権法で保護されるかどうか、という問題です。保護されるとして、その権利は誰に帰属するのかも重要な論点になります。
2. 肖像権・パブリシティ権(実在人物との類似性問題)
AIが生成した顔が、実在する誰かに似てしまった場合のリスクです。無意識の類似であっても、肖像権侵害やパブリシティ権侵害(有名人の顔が持つ経済的価値を無断で利用すること)が問われる可能性があります。
3. 契約上の権利関係(制作会社との取り決め)
AIインフルエンサーを外部の制作会社に依頼した場合、キャラクターの権利がどこに帰属するかを明確にすることです。曖昧なまま進めると、後々トラブルの原因になります。
この3つの権利関係を整理することが、法的リスクを最小化する第一歩です。
なぜ今この問題が重要なのか
2023〜2025年にかけて、生成AIの急速な普及に伴い、世界各国でAI生成コンテンツの法的扱いが議論されてきました。米国著作権局は「AIが生成した画像には著作権を認めない」という判断を示し、日本では「人間の創作的寄与があれば保護される可能性がある」というより緩やかな基準が示されています。
この法的なグレーゾーンがあるからこそ、企業としては事前の対策が不可欠です。「知らなかった」では済まされないリスクを、正しく理解し、適切に対策を打つことが求められています。
つまり、AIインフルエンサーの権利関係は「著作権」「肖像権」「契約」の3軸で理解し、各国の法的判断の違いを踏まえて対策を講じることが不可欠ということ。
視点①|AI生成画像の著作権──日米でどう違うか
米国:「人間の創作」に厳格──AI単体生成物は保護なし
米国著作権局の立場は明確です。AIが生成した画像には著作権を認めません。その理由は、米国の著作権法が「人間の創作的活動」を保護対象としているからです。
2023年、米国漫画作家がMidjourney(画像生成AI)で作成した画像を含む漫画の著作権登録を申請したケースがありました。著作権局は以下のような判断を下しました。
- 漫画の文章部分:著作権を認める
- 画像と文章の構成・編集:著作権を認める
- AIが生成した画像そのもの:著作権を認めない
この判断の背景には、「人間がテキストプロンプトを入力しただけでは、最終的な画像の表現をコントロールしたことにはならない」という考えがあります。AIが出力する結果は確率的に決まるため、人間の「創作的寄与」とは認められないのです。
2025年には、連邦裁判所がこの方針を支持する判決を出し、「完全にAIが生成した作品には著作権が認められない」という法理的な判断が確定しつつあります。
日本:「人間の創作的寄与」があれば保護の可能性
日本の著作権法も、著作物を「思想または感情を創作的に表現したもの」と定義しており、人間の精神的活動の成果であることを前提としています。つまり、AIが勝手に生成しただけの画像には著作権が発生しないという点は米国と同じです。
ただし日本では、「人間の創作的寄与」が認められる場合に著作権保護の対象になる可能性があります。経済産業省のAIガイドラインでも、AI生成物の権利関係は「サービス利用規約等により定める」とされており、デフォルトでは使用者(人間)に権利が帰属するとの解釈が一般的です。
具体的に「創作的寄与」として認められる可能性があるのは以下のようなケースです。
- 詳細なキャラクター設定(外見、性格、世界観など)を人間が設計している
- プロンプトを何度も調整し、パラメータを細かく変更している
- 生成後の画像に人間が修正・加工を加えている
- 一貫したキャラクターを維持するための工夫(LoRA学習など)を行っている
「猫を描いて」とだけ入力して生成された画像には創作性が認められませんが、「20代前半の女性、ショートヘア、青い瞳、優しそうな笑顔、白いブラウス着用、公園の夕方の光で」のように詳細な指示を与え、さらに修正を重ねた場合は、人間の創作的寄与が認められる可能性が高まります。
日米の判断基準を比較する
| 項目 | 米国 | 日本 |
|---|---|---|
| AI単体生成物 | 著作権なし | 著作権なし |
| 人間の創作的寄与 | 厳格に判断 | 緩やかに判断 |
| プロンプト入力 | 創作性なし | 詳細さ次第で創作性あり |
| 修正・加工 | 部分的に保護 | 保護の可能性 |
| 権利帰属 | 人間のみ | 規約で定める(デフォルトは使用者) |
この違いが実務的に意味するのは、「AIインフルエンサーのビジュアルをどの程度保護できるか」が国によって異なるということです。グローバル展開を視野に入れる場合は、特に注意が必要です。
つまり、AI生成画像の著作権は「日米ともにAI単体では認められない」が、日本では人間の創作的寄与があれば保護される可能性があるということ。
視点②|肖像権・パブリシティ権──「誰かに似ている」リスク

学習データに入った実在人物の影響
画像生成AIは、インターネット上の膨大な画像データを学習しています。その中には当然、実在する人々の顔も含まれています。AIが新しい顔を生成する際、学習データに含まれる顔の特徴が無意識に反映されることがあります。
この結果、「意図せず誰かに似てしまった」というリスクが発生します。特に有名人やタレントの場合、肖像権だけでなくパブリシティ権(その人物の顔が持つ経済的価値を無断で利用することへの権利)も問題になります。
肖像権侵害が問われるケース
肖像権侵害が問われる主なケースは以下の通りです。
- 特定の実在人物に酷似している:見る人が見て「誰か」とわかるレベルでの類似
- 商業的に利用している:広告、CM、商品パッケージなどで使用
- 本人の許諾なく使用している:同意や契約なしでの利用
- 名誉毀損を伴う:不適切な文脈での使用
実際に、AIが生成したキャラクターを実在人物の特徴と結びつけて使用したケースで、肖像権・姓名権・一般人格権の侵害が認められた事例があります。裁判所は「AIキャラクターと実在人物が高度に関連しており、ユーザーに実在人物と交流しているような体験を与えている」と指摘し、本人の同意なしにこのような使用を行うことは人格権の侵害にあたると判断しました。
パブリシティ権との違い
肖像権と混同されがちなのがパブリシティ権です。
肖像権は、本人の承諾なしに肖像を勝手に使われない権利です。プライバシー権の一種とされ、すべての人に認められています。
パブリシティ権は、有名人などその顔や名前に経済的価値がある人物が、その価値を独占的に利用する権利です。タレントやアスリートの顔を勝手に商品の広告に使うと、パブリシティ権侵害になります。
AIインフルエンサーの文脈では、意図せず有名人に似てしまった場合、肖像権だけでなくパブリシティ権の侵害も問われる可能性があります。
つまり、AIインフルエンサーのビジュアルは「意図せず誰かに似てしまう」リスクがあり、商業利用の場合は肖像権・パブリシティ権侵害の法的リスクが生じるということ。
視点③|企業が取るべきリスク回避策──実務的な5つの対策

対策1:実在人物に似せない設計ルールを設ける
最も根本的な対策は、制作段階から「実在人物に似せない」ことを設計ルールに組み込むことです。具体的には以下のような取り組みが有効です。
- 複数の異なる特徴を組み合わせる(例:異なる人種の特徴をミックス)
- 現実的には存在しない特徴を加える(例:極端に大きな目、非現実的な髪色)
- 特定の有名人を参考にしないようプロンプトで明示的に指示する
- 生成結果を複数人で確認し、類似性をチェックする
対策2:類似性チェックを導入する
AIインフルエンサーのビジュアルが完成したら、実在人物との類似性をチェックする工程を設けます。目視確認だけでなく、顔認識技術を活用した類似度チェックツールの使用も検討すべきです。特に日本の有名人との類似性チェックは、パブリシティ権侵害のリスクを避けるために重要です。
対策3:創作的寄与を記録する
著作権保護の可能性を広げるため、人間の創作的寄与を記録しておくことが有効です。以下のようなドキュメントを残しておきます。
- キャラクター設定書(外見、性格、世界観などの詳細な定義)
- プロンプトの履歴(どのような指示を与えたかの記録)
- パラメータ調整のログ
- 修正・加工の履歴
これらの記録は、万が一著作権の帰属が争われた際に「人間の創作的寄与」を証明する根拠になります。
対策4:生成AIツールの利用規約を確認する
使用する画像生成AIツール(Midjourney、Stable Diffusion、DALL-Eなど)の利用規約を必ず確認してください。特に以下の点をチェックします。
- 生成画像の商用利用の可否
- 生成画像の権利帰属(誰のものか)
- ツール側へのライセンス付与の有無
- 第三者の権利侵害時の免責事項
無料プランでは商用利用が認められないケースや、生成画像に対してツール側に広範なライセンスが付与されるケースがあるため注意が必要です。
対策5:社内規定・ガイドラインの策定
AIインフルエンサーの活用に関する社内規定を策定することも重要です。以下の内容を含めることを推奨します。
- AI生成コンテンツの使用範囲と目的
- 権利確認の手続きフロー
- 「AI生成であること」の表示ルール
- トラブル発生時の対応フロー
- 法務部門の承認プロセス
つまり、リスク回避には「設計段階での配慮」「類似性チェック」「記録の保存」「規約確認」「社内規定」の5つの対策を組み合わせることが有効ということ。
視点④|制作会社との契約──確認すべき5つのポイント

確認ポイント1:キャラクター権の帰属先
最も重要なのは、AIインフルエンサーのキャラクター権がどこに帰属するかです。「制作会社に帰属する」「委託企業に帰属する」「両者で共有する」のいずれかを明確にします。長期的に自社ブランドの顔として育てるのであれば、キャラクター権は委託企業に帰属させることが原則です。
注意が必要なのは「AI生成部分」と「人間の修正部分」を区別する必要性がある場合です。制作会社によっては、AIが生成した部分の権利は自社に残すという条項を設けることがあります。
確認ポイント2:生成コンテンツの使用範囲
制作してもらった画像や動画をどこで使えるかも確認が必要です。地域(日本のみか、グローバルか)、媒体(SNS、テレビCM、印刷物など)、期間(無期限か、期間限定か)を明確にします。
特にグローバル展開を視野に入れる場合は、海外での使用権も含めて契約しておかないと、後から追加費用が発生する可能性があります。
確認ポイント3:第三者権利侵害の保証
制作会社が生成したAIインフルエンサーが第三者の権利(著作権、肖像権など)を侵害していないことを保証する条項を入れます。万が一、権利侵害が発覚した場合の責任の所在(誰が損害賠償をするか)も明確にします。
信頼できる制作会社であれば、この点については明確な保証を提供しているはずです。逆に、この点について曖昧な回答しかしない会社には注意が必要です。
確認ポイント4:修正・変更の範囲と費用
完成後の修正や、キャラクターの微調整に追加費用がかかるかどうかも確認します。AIインフルエンサーは継続的に運用するものであり、ブランドの方向性に合わせて微修正が必要になることもあります。修正の範囲と費用については、最初の契約時から取り決めておくことをお勧めします。
確認ポイント5:運用支援の有無
制作だけでなく、SNS運用やコンテンツ生成の継続的なサポートを受けられるかも確認ポイントです。AIインフルエンサーは「作って終わり」ではなく、継続的な運用が成果につながります。制作会社が運用支援まで提供できるかどうかは、長期的なパートナーシップを考える上で重要な判断基準になります。
| 確認項目 | 確認すべき内容 | 推奨される契約内容 |
|---|---|---|
| キャラクター権の帰属 | 誰が権利を持つか | 委託企業に帰属 |
| 使用範囲 | 地域・媒体・期間 | 無制限(または必要範囲を明記) |
| 権利侵害の保証 | 責任の所在 | 制作会社の保証と賠償責任 |
| 修正・変更 | 範囲と費用 | 一定範囲は無償 |
| 運用支援 | 継続サポートの有無 | ワンストップ対応可 |
つまり、制作会社との契約では「権利帰属」「使用範囲」「権利侵害の保証」「修正費用」「運用支援」の5点を書面で明確にすることが、トラブルを防ぐ鍵ということ。
よくある質問【Q&A】
Q:AIインフルエンサーの画像を勝手に使われたら、著作権侵害で訴えられる?
A:状況によります。AIが単体で生成した画像には著作権が認められない可能性が高いため、著作権侵害での訴えは難しいケースがあります。ただし、人間の創作的寄与が認められる場合(詳細なキャラクター設計、修正・加工など)は、著作権保護の対象になる可能性があります。また、不正競争防止法や商標権など、別の法的根拠で対応できる場合もあります。
Q:海外でAIインフルエンサーを使う場合、日本の法律とどう違う?
A:各国で法的判断が異なります。米国ではAI生成画像の著作権は認められにくいですが、EUでは透明性要件(AI生成であることの明示)が重視されています。中国では「人間の知的労働」が認められれば保護されるという判断が出ています。グローバル展開する場合は、各国の法的環境を確認するか、権利関係に強い制作会社に相談することをお勧めします。
Q:SNSでの「AI生成」表示は必須?
A:現時点では法的に義務付けられていませんが、透明性の観点から表示することを推奨します。消費者の信頼を得るためには、AIであることを隠すよりも、最初から明示した上でコンテンツの質で勝負する方が長期的にはプラスになります。また、景品表示法のステマ規制との関係では、PR投稿であることの表示は必須です。
Q:自社でAIインフルエンサーを作る場合、何に気をつけるべき?
A:1使用するAIツールの利用規約(商用利用可否、権利帰属)、2実在人物との類似性回避、3創作的寄与の記録、4社内での承認プロセスの整備、の4点に留意してください。特に法的知識がない場合は、最初は実績のある制作会社に相談することをお勧めします。
Q:制作会社選びで失敗しないためには?
A:以下の3点を確認してください。1過去の実績と事例の透明性、2法的リスクへの知見(著作権・肖像権への対応)、3制作から運用までのワンストップ対応可否。この3点をクリアしている制作会社であれば、リスクを最小化しながらAIインフルエンサーを導入できます。
この記事のまとめ
- AI生成画像の著作権は、日米ともに「AI単体では認められない」が、日本では人間の創作的寄与があれば保護される可能性がある。詳細なキャラクター設計や修正・加工の記録を残すことが重要
- 肖像権・パブリシティ権のリスクは、AIが学習データに含まれる実在人物の特徴を無意識に反映することで発生。「誰かに似てしまう」リスクを設計段階から考慮し、類似性チェックを導入することが対策になる
- 企業が取るべき対策は5つ。実在人物に似せない設計、類似性チェック、創作的寄与の記録、利用規約の確認、社内規定の策定を組み合わせる
- 制作会社との契約では、「権利帰属」「使用範囲」「権利侵害の保証」「修正費用」「運用支援」の5点を書面で明確にする
- 法的リスクは「知らなかった」では済まされない領域。事前に正しく理解し、適切な対策を講じることで、AIインフルエンサーのメリットを安心して享受できる
AIインフルエンサーの制作・運用をどこに依頼すべきか迷っている場合は、制作から運用まで一気通貫で対応しているBeyondAIにご相談ください。権利関係の知見も持ち合わせており、法的リスクを最小化しながらAIインフルエンサーを導入できます。
